「……出だしから最悪…」

自分の浅はかさを呪い、向かい合わせに置かれたソファの片隅に身を埋める。

所々が破れかけて年季の入ったそれは、少し体重をかけただけで、女の人の悲鳴みたいな音を出す。


そうこうしている間にも、すぐにキッチンから香ばしい匂いが漂って来て、私は彼とのレベルの差を改めて思い知らされるようだった。


……ああ、こんなんじゃダメだな、私。

もっと努力しないと、今まで彼と共に暮らしてきた猫たちに負けてしまう。


「……猫…か」

何故だか、彼は女の人の事をそう呼ぶ。

女の気まぐれな所やヒステリーが、それと似ているせいなのかもしれないけれど。


彼曰く、女の人にも〝毛並み〟があるんだとか。

だから、私は『ロシアンブルー』。一体、どう言う感じなのかは分からないけれど、少なくとも〝雑種〟よりはマシな気がする。