「まだ、いってんの?」

もっと伊勢谷の声が低くなる。

本気で怒ったかな。

思わず下を向いた。

「そんなこと気にしてない。事件に巻き込まれたからって誰もお前を恨まない」

「…うん。ありがとう」

その言葉と同時に私は上を向いて笑った。

「じゃあ、私まだ行くところがあるから」

「どこに行くんだ?」

「お母さんのお墓参り」

「……」

伊勢谷はなにか考えている。

どうしたんだろう?

「…俺も行く」

「…え?な、なんで?」

「なんでも」

そう言って伊勢谷はビルから大通りの道へ行ってしまった。

変な伊勢谷。