隣の市の15階のビル。

隣の市までは歩いて行ける距離ではあるが、さすがにきつい。

電車を使って私は来ていた。

花を2つ持ってビルの真下に行く。

──ここで、お父さんが死んだ。

そして犯人の1人も。

そこに花を置いて顔の前で手を合わせる。

お父さん…やっと、家族の事について落ち着いたよ。

といっても、昨日やっと、だけどね。

これから墓参りに行って来ないと。

別に今日が命日って訳じゃないけどけじめ、かな…。

やっと、一歩前に踏み出せた。

「…篠田?」

「え?」

後ろから声がした。

振り向くと伊勢谷が立っている。

私は座っているから自然と上を向くかたちになる。

「な、なんで…?」

「いや、家近くだから……何してんの?」

……びっくり。

「んー…現場参り?」

「え?」

不思議そう、だけどびっくりした様子だ。