嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



『……夜錐先輩と灘谷くんが、いない?』



今日も今日とて会議室で繰り広げられるのは、送別会の準備作業。


集合時間の5分前に向かうと―――部屋に入った直後、とてもマズイ状況だと告げられた。


教えてくれた花寐先輩は、困った表情のままガシガシと頭を掻いている。


ただの作業なら、ここまで困るとは思えない。



『(………あっ!今日は…)』



そういえば、そうだ。


今日は引退する3年生の代表生徒をここに呼んで、一緒に話し合いをするという内容だった。


総まとめ役の夜錐先輩に、この場で使う大切なプリント作りを任されている灘谷くん。


この2人がいないと、話し合いどころじゃない…!



「あー…山本ちゃんなら場所知ってるかと思ったんだけど…」


『…す、すいません。私、なにも知りません…』




しゅんとして頭を下げると、慌てて花寐先輩が私の頭を撫でた。