嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



『………わかんな…い?』


「なんで疑問系!?」



紫折の言ってることは尤もで、私は言い返すこともできずさらに俯いた。


…やっぱり……好き、なのかな。


灘谷くんのことを考えると、苦しくて苦しくて。


夜錐先輩のことを考えると、………?


……え、なんだろ。



『…会いたい?』


「え?」


『っ!!な、なんでもない!』



あ、会いたいってなに!?


かかか彼女でもないくせになにを生意気なことを!!


振り払おうとすればするほど、夜錐先輩が頭の中にもわもわと広がっていく。



『(…ち、違う……違うんだから…!)』



…結局、時間いっぱいまで考えてみたけど。


私は灘谷くんか夜錐先輩、どっちが好きなのかいまいちわからなかった。



『…どっちも、って…』



有り得ないよね…!


つい先日も同じこと考えてたことを思い出し、ますますへこんだ。


…自分のことなのに、自分がわからないなんて。




机に顔を伏せて、誰か教えて……と消えそうな声で呟いた。