私は嘘を吐いてることに……なるの、かなぁ。
「優梨ちゃん良いなぁ!あの眉目秀麗、天下の夜錐先輩とお近づきになれるなんて!」
翌朝。
HRが始まる前に紫折の元を訪ね、最近起きたことを全て話した。
…天下ってなに…?
先輩もとい年上の人の話になると大興奮する紫折を少し冷めた目で見ながら、私は続きを促した。
私が聞きたいのは、そこじゃなくて。
「まぁ……確かに、ね。でも、優梨ちゃんは夜錐先輩が好きなんだよね?」
『ふぎゃっ!』
「あはは、変な声出さないでよー。良いじゃん、新しい恋。でもなんで、灘谷くんのことまだ好きって言ったの?」
…うぐっ。
なによりも訊かれたくなかったことを訊かれてしまい、私は言葉に詰まった。
………なんで、って…。
『…ま、まだ……好き、だから…』
顔は俯いたままちらりと目線だけ動かせば、紫折は口を開けて瞠目していた。
あまりにも予想通りの反応に、私が溜息を吐きたい気分だった。
「……………どっちも好き、って…こと?」

