嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



綺麗で、頭が良くて、したたかで―――灘谷くんに、好きになってもらえて。


七鴇さんの魅力あってこその両思いだって、頭ではわかってるのに。


……妬ましくて、仕方ないの。


こんな黒く澱んだ感情なんて、消えてしまえば良いのに。



「………山本さんは、まだ好きなんだろ?」



いいえ。

もう、好きじゃありません。



…そう、言いたいのに。



まだ諦められていない恋心が、私の首を縦に振らせた。


沈黙が、流れる。


こんな時に花寐先輩がいてくれれば良かったのに。


先輩は買い出しに行っているとわかっていながら、そんなことをひっそりと呟いた。



「好きでいたら、ダメなのか?」



…えっ?


驚いて顔を上げると、夜錐先輩は頬杖を付いてこちらを見ていた。


真っ直ぐ私を見ているその瞳は、射抜くような鋭さを持っている。



『…………彼女、いるんですよ?』




声が、震えた。