今、私たちがなにをしていたかと言うと。
当日の流れの下書きがいくつか出来上がっていたため、設定に無理がないかなどを調べていた。
そんな矢先。
夜錐先輩の爆弾発言があったため、私は作業を中断せざるを得なかった。
「確かに灘谷は優秀だな。俺が選んだ、次期委員長なだけある」
俯くと、瞳を覆い隠さんばかりに長い前髪。
開け放した窓から流れ込む秋風で、さらさらと揺れる黒髪。
灘谷くんと同じように鋭い目付きをしているのに、夜錐先輩はいつも優しい瞳をしていて。
堅い口調は似てるのに、灘谷くんよりも物言いはずっと柔らかい。
夜錐先輩の横顔を凝視しながら、私はそんなことばかり考えていた。
『(…………夜錐先輩だって、すごいですよ)』
…どうしてなの。
先輩は灘谷くんのことを褒めているんだから、私もそれに乗っかれば良いじゃない。
なんで私、夜錐先輩のことばかり思い付くの…?
「山本さん?」

