嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



「山本さんは、灘谷のことが好きなんだな」


『きゃふっ!?』



意味のわからない叫び声を上げ、私は盛大に椅子から転がり落ちた。


い、痛い…!


じんじんと熱を帯びていく腰をさすりながら、私はどうにか椅子に座り直した。



『…………………………………………………夜錐先輩、誰から聞いたんですか』


「勘だよ」



っ!?


予想外すぎた返答に、私は限界まで目を見開いた。


ななななななっ…!



『(わ、私って…そんなにわかりやすかったっけ…!?)』



こ、これからなにを言われるんだろ…!


不安からガタガタと震えていると、夜錐先輩が小さく笑う声が聞こえた。



「安心しなよ。誰にも言わないから」



…その笑みが、仕草が、やっぱり灘谷くんに似てると思った。


もしかして、兄弟とか従兄弟とか……そういうオチだったりする…?



『……ありがとう…ございます…』



黙っててくださって。




蚊の鳴くような声で、そう付け足した。