嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



「今のところ、この中から選ぶ予定なんだけど」


「予算の組み立てなら得意だけど、花束は俺たちじゃよくわからないんだ。山本さんは、どれが良い?」



その言葉を耳に入れながら、私はじっと写真を見つめた。


確かにどれも可愛いし、綺麗だし、色合いも問題ないと思う。


……でも、やっぱり。




『全部ダメです』




きっぱりと言い切った私を見て、灘谷くんが目を見開いた。


レア!


心の中でガッツポーズをすることを忘れないで、私は灘谷くんの方に向き合った。



『…これ、今までに制作した花束ですよね?』


「あ、ああ。今回は時間がないから、過去のカタログから探したんだ」



以前、資料整理をした時にこの写真を見た気がする。


あの時はなにも考えていなかったけど、あれは今まで委託したフラワーアレンジメントのファイルだったんだ。



『過去に贈った花束を再び贈るなんて、失礼です。再考するべきだと思います』



…………。


……………私はなにを!?


おずおずと目線をずらすと、無言で写真を見つめる灘谷くんが視界に入った。



わ、私はなんて生意気なことを…!!