『(……昨日は夢みたい、だった…)』
翌日。
いつも通りに授業を受けながら、私はどこか上の空だった。
脳裏に焼き付いて離れないのは、私の頭を撫でながら微笑を浮かべていた夜錐先輩の姿。
それから時折、花寐先輩の柔らかい笑顔が頭をよぎっていた。
『(私、なにしてるんだろ…)』
昨日までは四六時中、灘谷くんのことばかり考えていたのに。
今の私の心には、灘谷くんのスペースが微塵も存在していなかった。
代わりにそれを埋めるのは、2人の先輩。
『(…………なんかもう、よくわかんない…)』
自分がなにを求めているのか、なにを思っているのか。
……心の中にはいないくせに、灘谷くんが視界に入ると必ず意識してしまう自分も。
頭の片隅で夜錐先輩に会いたいなんて思ってる、自分も。
…いっそ誰かに説明して欲しいくらい、気持ちの整理がつかなかった。

