『……今日は、ありがとうございました』
私の家の前に着いたところで、深々と頭を下げた。
ほんとなら地面に額を擦り付けても足りないくらい感謝をしていたけど、さすがにコンクリートを血で染めるわけにもいかない。
ましてや先輩方に、そんなシーンを見せるわけにもいかなかった。
「山本ちゃんは可愛いからね、僕で良いならボディーガードならいつでもするよ」
冗談なのか本気なのかわからない―――いや私に対しては120%前者なんだけど―――ことを言いながら、花寐先輩が笑った。
その隣では、夜錐先輩が眉を顰め呆れ返っている。
「……明日から忙しくなると思うが、頑張ろう。山本さんのこと、頼りにしているから」
た…頼りに、してくれてる…?
なんでもできる完璧超人の夜錐先輩が、私を…?
舞い上がらない、わけがなかった。
『あ、足を引っ張らないように頑張ります!よろしくお願いします!』
「ああ、お休み」
「また明日ね、山本ちゃん」
角を曲がって見えなくなるまで、私はずっと2人の背中を見送った。

