嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



『ごめん、なさっ…!』



ぽんっ



「山本さんは悪くない。俺の言い方がキツかった、それだけだ」



…頭に乗せられたのは、夜錐先輩の大きな手。


いつもなら止まらないマイナス思考が、ぴたりと止んだ。



『………でも、』


「山本ちゃん。もう良いじゃん、お互い様ってことで。ね?」



花寐先輩がやっぱり柔らかい笑みを、私に向けてくれて。


この人は本当に優しいな、漠然と思った。


私を落ち着かせようと頭を撫でてくれてる夜錐先輩は、比べるのも失礼だけどもっと優しい。


…こんな私、鬱陶しいって思うのが普通なのに。


先輩たちはどうして、私を慰めてくれるんですか?


なんで私を、突き放さないんですか?


色んな感情が相まって、私はろくに喋れなかった。


…ただ、肯定の意味を表すために。




何度も小さく、首を縦に振った。