嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



「……すまなかった。君がそこまで真に受けるなんて思わなかったんだ」



私は、さっきまで狼狽していた自分の姿を思い出した。


…………バカじゃないの?


なにあんな、涙目になっちゃって…!


自分の間抜けさに、穴があるなら入りたい気持ちに駆り立てられた。


寧ろ、自分で穴を掘って入りたい。



『私の方こそ、すみません!ほんと、私っ…!』




“山本さんって、マジ冗談通じないよね”




『(………っ!)』



私と話した後に、必ず相手から言われる言葉。


毎回なんでもかんでも鵜呑みにするのは、私の悪い癖だ。


真に受けた所為で、今みたいに相手に迷惑を掛けてしまう。



『(また、やっちゃった…!)』



夜錐先輩はきっと、気恥ずかしさから私にああ言ったのに。


なのに私は、先輩を不快にさせたなんだって喚いて…!





こんなの全部が全部、普通に考えればわかることじゃないっ…!