嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】



『……っご、ごめんなさい!!』



泣きそうになりながら、ガバッと頭を下げた。


どうしよう、夜錐先輩に不快な思いをさせちゃった…!


私はぐるぐると最悪な展開を想像して、それがまた涙を誘った。


瞳を固く閉じて、俯いていた時だった。



「…………あはははっ!」



花寐先輩の笑い声が、街灯の少ない帰路に響いた。



「山本ちゃん、ヒトの感情に敏感すぎるよ。大丈夫、真尋は怒ってないから」


『ふぇ…?で、でも……夜錐先輩に不快な思いをさせました…!』


「だってさ、真尋」



花寐先輩が責めるような目をして、夜錐先輩を見た。



「……やめろ、元睦。山本さん、お願いだからそんな泣きそうな顔をしないでくれ」



え、え…?


先輩は怒ってないし、不快でもなかったの…?




固まったまま反応できないでいると、夜錐先輩がバツの悪そうな顔で私を見た。