嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】




『(…なんか…良いなぁ…)』



単純に、そう思った。


花寐先輩と夜錐先輩が、固い友情で結ばれてること。


羨ましくもあり憧れでもあり、何故だかそれでいて嬉しくもあった。



「なんか改めて言われると照れるなぁ」



口ではそう言ってるくせに、花寐先輩は至って平常だった。


逆に夜錐先輩の方が、よっぽど恥ずかしそうに顔を背けていた。



『(………お似合い、です)』



2人に挟まれながら歩くのが、少し申し訳なくなった。


いつもならきっと、2人で仲良く話しながら帰ってるはずなのに。


…私がいると、絶対邪魔になってるよ…。



そんな考えを見透かしたように、花寐先輩が私の肩を叩いた。



「山本ちゃんさぁ……2人の邪魔しちゃって悪いなぁ、とか思ったでしょ」



にやりと笑みを浮かべる花寐先輩に、私は思わず目を見開いた。


な、なんで読まれてるの!?



「……山本さん、そんなことは思わなくて良いよ」





溜息混じりに夜錐先輩が答え、私は呆れられてしまったんだと気付いた。