『…っす、すみません!わ、私ってば…!』
先輩の呼び掛けにも気付かないくらい、ずっと灘谷くんのことを考えてました。
なんて言えるわけがないっ…!
羞恥心で真っ赤になっているだろう自分の顔を想像して、情けなさのあまり泣きそうになった。
「山本ちゃん、帰ろっか」
そんな私を慰めるように、柔らかな口調で花寐先輩が言った。
……寧ろ…ますます泣きそうです、先輩。
こくん、と無言で頷くと両脇の先輩が同時に立ち上がった。
「山本さん、家の方向は?夜道は危ないから、迷惑じゃなければ送るよ」
『…ええっ!?』
“夜道は危ないから”
『(ま、前っ……灘谷くんにも言われたセリフだ…!)』
バクバクと鳴り出す心臓の音が、先輩たちにも聞こえてしまわないか怖かった。
…もちろん、そんな貴重すぎる申し出を断るはずもなく。
『お…お願い、しますっ…』
私は再び、頭を下げた。

