「グスッ、グスッ……純一郎……好きだったのに……」

涙声で搾り出すようにそう言う、葵ちゃん。



「すごく優しくて、大切にしてくれて……でも、それって『私自身』にじゃなくて、『運命の人』にだったんだね?」

そう言った後、また『グスッ、グスッ』と、葵ちゃんは泣いた。



「きっと、純一郎の『運命の人』は葵ちゃんじゃなかった……って事は、逆に言うと『葵ちゃんの運命の人は別に居る』って事だから、純一郎に負けないで、葵ちゃんも探せばいいんじゃないかな?」



俺の言葉で、葵ちゃんの泣き声が止まった。

しばらくすると『クスッ』と笑い声がした。



「ありがとう、龍太郎くん」

葵ちゃんは俺の腕の中で、そう言った。



この時はまだ、俺も葵ちゃんも気が付いてなかったんだ。

自分の『運命の人』は、目の前に居たって事に……。



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