精神的打撃を受けた桜は、落ち込みながらも、朝餉を作るため、台所に向かうことにした。


「…うぅ、お台所に行ってきます…」

「おう」


土方は書類から目を離さずに返事をし、桜はそれを聞いてから部屋を出た。


台所に着くと
お美弥さんは既に調理していた。

トントンと、一定のリズムで野菜を切る音は、何となく心が落ち着く。


優しい雰囲気を壊したくなくて、桜は遠慮がちに声をかけた。


「あの、お美弥さん」

「ん?おはよう」

「あ、おはようございます。昨日はすみません…」


お美弥さんは、一瞬何のことか分からなかったようだが、すぐに理解して


「あぁ、お片付けでしょう?良いの、桜さんは疲れてたんだから」


と言った。

修行だったんでしょう?と訊かれ、桜は答える。


「はい!いやもう山崎さんの新人虐めったらないですよ」

「あらまぁ」

「いきなり山に連れて行くし、修行では、急所は狙うわ本気だわで」

「あら……、あ、あの桜さん」


桜の背後を見たお美弥さんは、様子が変わるが、桜は気付かないで話した。


「私は必死なのに、なんか飄々としてて悔し―――いったぁあ!」

「…あらまぁ」


桜の後ろには山崎がいて、話を聞いた山崎は桜の両側のこめかみをグリグリと拳で押した。



「…お前こそ眉間だの鳩尾だの心臓だの、急所ばかり狙っていたよな」

「痛い痛い痛い!痛いです山崎さん!」

「飄々としていた覚えもない。俺も必死だった」

「分かりましたゴメンナサイ!痛いです!」


桜は謝り続け、ようやく手を離してもらえた。