桜が散るように ー 新撰組 ー




「実戦はさせます、必ず」


そう言って、山崎は部屋から出て行った。

土方は少し経ってから、桜の寝ている布団の横に座り、桜の頭を撫でる。

しばらくそうしていると


「おとーさ…」

「ぶはっ、俺はお前の親父じゃねぇよ」


わしゃわしゃと、さらに頭を撫でる。


「……ごめ、」

「ったくよぉ」


寝言で弱々しく謝罪する桜に、土方は苦笑する。


桜は、泣いていた。
涙を流して。


「泣け、大丈夫だ」

「…っう」

「寝ているときしか泣けないなんてよ、不憫だな、お前も」


土方はぐしゃぐしゃになった桜の髪を梳くように、再び桜の頭を撫でる。

拾った日も、そうだった。

寝ながら、嗚咽を押し殺すように涙を流していた桜を、土方はただ撫でただけだった。



「今だけでも、泣いとけ。大丈夫だ」


少女が背負っているものと、これから背負うであろうものを考えて、土方は刹那の安息を与えてあげた。