土方は詳細を山崎に語る。
山崎は眉間にシワを寄せた。
「それは…」
「あぁ、危険だ。川瀬は実戦初心者だしな。……降りるか?」
その問いに、山崎は首を振って否定を表す。
「…、むしろ、その仕事で良かったと、考えてます」
「何故だ?この仕事をし終えた後、壊れるかもしれねぇぞ。なんたって、この仕事は」
「川瀬桜が、」
山崎は土方の言葉を遮って話し出す。
「川瀬桜が、寝言で言ってました。『おとうさん、おかあさん…』と」
土方は、少し心が痛んだ。
だが、それを表情には出さず
ただ、山崎の話を聞くことに徹した。
「川瀬桜は、あれだけ鍛えられていて、実戦経験がないです。それは川瀬桜のいた時代に、争いがない、もしくは少なかったというのが妥当でしょう」
「…確かにな」
「ですが、ここは争いこそが時代そのものです。コイツが求める平穏も両親も、ここには無いです」
山崎はチラッと、今は穏やかに寝ている桜を見る。
「…この時代で生きていく、その覚悟が必要でしょう」
守ってくれる両親はいない。
生きていくには、自分で自分を守るしかない。
今はこの時代で、この新撰組で生きていく道しかない、まだ幼さを残す少女が―――…
二人にとっては哀れで
しかしそれはどうしようもない事だった。



