桜はサクラの木の幹にそっと触れ、微笑みながら話し出した。 「私の母、サクラの木が好きだったんです。私の名が“桜”なのもその理由です。 今のは、母が好きな歌の一節ですよ。……題名は忘れてしまったのですが。」 そう言っている桜は、母のことを思い出しているのだろう。 懐かしむ穏やかなその表情には、少し影が差していた。 「……そうか。」 何かを察したような土方。 ただ、相づちを打っただけだった。