その時の山崎の心情も、梅さんのことも、桜には何一つ分からない。
知ったかぶりも出来ない。
「でも、でも、山崎さん」
他の人のことは分からないけれど、自分のことなら真実を言える。
「私は、山崎さんの笑顔が好きですよ」
「………」
「笑顔になってくれると嬉しいです!」
「…川瀬」
頼りなく揺れる瞳に訊ねる。
「今は、それじゃダメですか?」
すると、山崎は泣きそうな顔で微笑んだ。
「お前は、楽観的だな」
「……はい?」
「楽観的で短絡的だ」
「ちょ、ちょっと山崎さん?え、悪口ですか?せっかく――――」
文句を言おうとしたが、温かいもので全身を包まれ、閉口する。
抱き締められている、と気づくのに数秒かかった。
「あ、あの!!?」
「俺がずっと悩んできたことを、お前が嬉しいからそれでいい、か?」
「う……すいません」
「だが…」
ギュッと身体に巻き付く腕の力が強くなる。
比例して、脈が早くなる。
(な、なんか無性に離して欲しい…!)
「あの、山崎さ…」
「だが、駄目じゃない」
「え?」
「ありがとう」
山崎はそう言って、桜の髪に口付けをした。



