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「椿ちゃん椿ちゃん」
「はーい!なんですか奥さん」
潜入先の店の奥さんに、おいでおいで、と言われて
パタパタと駆け寄る。
すると、奥さんは桜の耳元に口を寄せ、ヒソヒソと話し出す。
「若い男の子から指名があったけど、恋仲かしら?」
ニコニコと、悪意無き笑顔で言われ、顔にカッと血がのぼる。
手と顔を横に降り、必死に否定する。
「ちがっ、違いますよ!私に恋仲なんて居ません!」
「あらま、あの男の子ってば見る目ないわねぇ」
「いやー、正常ですよ、たぶん。で、その男の子やらは何処ですか?」
「ああ、あの席よ。一番右端にある長椅子に座ってる」
教えられた方向に目を向けて
「………」
無言で視線をそらした。
奥さんが不思議そうに
見てくる。
「アレ…本当に私を指名したんですか?」
「ええそうよ」
「聞き間違えじゃなく?」
「確かに年を取ってから耳は遠くなったけど」
――聞き間違えじゃないわよ?
悪意が無い笑顔とは、素晴らしく恐ろしい。
嘘か冗談であって欲しかった…!と項垂れた。



