閉口してしまっている桜に対し、饒舌に語る吉田。
「もしかして諦めてた?戻れるんだよ、君は。でも……」
「でも…なんですか」
「あっちは君の時代じゃあないけれど」
「………え」
頭が真っ白になるとは、こういうことか。
とか思う。
意味が分からない。
(私は――平成で生まれて、平成で生きてきたはず…)
「君は、もともと、この時代の人間だよ」
「…ウソ」
「嘘じゃないよー」
これが真実なんだよー、と言って、現実逃避から連れ戻す吉田は笑顔で。
(私がもともとこの時代の人間で……つまり私はすでに二回も時空移動を…?じゃあ両親は―――それに芳野は…)
思考がこんがらがる。
「君は、どっちが良いの?平和な時代と、動乱なこの時代と」
「……どっちが」
どちらを、望むだろうか。
選ぶ余地など無いと、思っていたのに……選択肢が出来たなら。



