全部受け止められたら、
その時は目一杯泣こう。
そう思った。
それからは他愛もない話をしながら(桜が話し、山崎は相槌を打つだけだったが)ようやく村についたのは、日が昇りきったころだった。
「ここ、ですか?」
「そうだ」
山に囲まれた中、切り開いてあった村は悲惨なものだった。
全壊してある家が殆どで、そうでなくとも半壊でとどまっているものばかりだった。
まともな形を残してる家は、片手で数えられるほどにしかなかった。
(此処が……)
村に足を踏み入れる。
瓦礫を除けながらも、家の中を調べる。
―――『おにいちゃん』
ふと、幼い女の子の声が聞こえた。
桜は後ろを振り返るが、誰もいない。
「どうかしたか?」
「いえ…ちょっと空耳が」
(泣いているような…声だったな…)
桜は数少ない、壊れずにすんでいた家に入る。
壊れてないとはいえ、埃などが凄かった。
ふと、文机の上に乗っていた一冊の本を見つけ出した。
「山崎さん」
そう声をかけると、
違うところを調査していた山崎が桜の近くにきた。
「なんだ?」
「これ、読めます?」
そう言って渡すと、山崎はパラパラと頁を捲る。



