あたしは必死で背の高い草木を掻き分けて前に進む。 進んでいくうちに声とは別に、《香り》があたしの鼻をくすぐった。 それは進んで行くごとに香りを強くし、土の香りがする山の空気を濃密に変えた。 花…………? 遂に目の前が拓けてくる。 あたしの前に広がるのは山奥深くに広がる広大な野原―――― そして、 その野原一面の ――――白い百合の花畑。