なんとなく気になっていた小川さん。
どんな人が机を取りにくるんだろうと思っていた。

私は朝、出勤して早々に出会ってしまった。

「見習いの人?何歳なの?」

小川さんはふと湯浅教官との話を止めて私の方を見た。

「そうそう。うちの見習いでな。運転がかなり苦労してるんだよ。」

私ではなくて、湯浅教官の方が返事をしてしまっていた。

「そうなの。それにしても、若いねー。」


見られてる、よね。

確かに私はどちらかと言えば童顔だ。
おかげで制服とネクタイは似合わない。
さらに胸位まである長い髪の毛を頭の上で二つにくくっている。
見る人が見たら、教習所の教官(見習い)なんて想像がつかないだろう。

そんな格好の私。


「うちで免許取ってな。わしがあの時も教えたんだが、まったく変わらん。」

「湯浅さんの教え子かー。若いなー。」

二人はまた会話を始める。

元々知り合いなんだろう。

話が弾んでいる。


ふと自分の腕時計を見たら

「湯浅教官、朝礼が始まっちゃいます。」

そんな時間。

「おぉ。じゃあ行こうか。小川さんも一緒に行こうか。」

「わし?わしはまぁ遠慮しとこうか。」

いきなり自分にも振られて困ってしまっている小川さん。

「まぁ、全く知らない顔じゃないし。行こう!」

なんて誘うから

「それじゃあ、まぁ一番後ろの方にでもいるよ。」

小川さんもついて事務所へと戻った。


それから朝礼が終わって、みんなそれぞれ自分の仕事へ。

湯浅教官も教習があるのか外へと出て行く。

私たちは山本教官が休みだから自主勉強。
と思ったら、笠井君だけが机をトラックに積むために所長に呼ばれた。

学科を聞きに行こうと荷物を持つ私。

事務所の私の机とは正反対の場所で机の事を話している小川さん。


これが小川さんと私の初めての出会いだった。

私のこれからの人生、小川さんがたくさん、そして大きく関わってくるなんて。


この時はまだ夢にも思わなかった。