お手伝いさんに案内され彼女の部屋の前に来た
白いドア
この向こうに彼女がいる
「…」
逃げたい
でも…
ちゃんと向き合わなきゃ
決めたんだから
ゆっくりノックする
コンコン
「はい…どうぞ」
中からきれいな声がした
はっとするくらいきれいな声
キィとドアを開ける
「…」
「久しぶりね…みちる」
白いスカートに淡い水色の
カーディガンを着た彼女がいた
わたしを捨てた母
「…」
「ごめんなさいね。病状が安定しなくて、こんなずるずる伸びてしまって…みちる?」
きれい
年は弥生さんと変わらない
はずなのにそんな年齢に見えない
弱々しくて儚い
まるで次に目を離したら
消えてしまいそうなくらい綺麗だ
「立ったままだったら疲れるから座って、」
わたしはこの人に会ったら
言いたいことがたくさんあったはずなのに
ぶつけたい感情がたくさんあったはずなのに…
「…」
「…」
ただ沈黙が続いていた
ザザァンと海の音がかすかにする
「…なんて言ったらいいのかしらね。わからないわ…ダメね」

