「聞くから、」
翔太君は目を伏せてはぁと息をはいた
風が頬を撫でる
暑いじめっとした生ぬるい風
「…うまく言えないけど、みちるさんを親父達に連れていかれそうで怖いんだ。だからおれは結婚を急いでる…」
「連れていかれる?」
「おれはあなたをいつも心配ばかりしてた。…あの事故で記憶は失うし、プールに落ちるし…、なんだか自分からあちら側に行きたがってるようで…」
自分からあちら側に…、
あちら側
父や怜一さんのいる…
「それはごめんなさい…、けど理由があって。」
「わかってる…みちるさんを責める訳じゃないよ。何事にも理由はある、けど…あなたは人を大事にし過ぎている。それは悪いことじゃない。けどその気持ちがいつか、あなたを押しつぶして。…気付かないうちに自分で自分の首を締めてるんじゃないかて…まるでそうなることを望んでるみたいで…」
ごめん なんかうまく言えないと
翔太君は言葉を切った
私が私の首を締めている-
人を大事にしすぎる
悪いことではない…
けどそれは自分を大事にしてない
粗末に扱っている事と同じなの?
私はわたしを大事にしてる
あちら側にいく気なんてさらさらない…に決まってるのに

