「なに睨んでんのよ、」
「べつに…」
美帆さんは そういえば
用事あったわと席を立った
「…座ったらどうですか」
ずっと立ったまま
市村さんはあたしをみた
無表情な顔をしている
役の時はあんなヘラヘラしてるのに…
「失礼します。…」
「…槌谷さん君の義理のお姉さんなんだって?神田に聞いたらようやく話してくれたよ」
「……そうです」
「言いふらしはしない…黙っていれば分からないよ。」
あっさりと市村さんは言った
「ありがとうございます。…あの市村さん、靴べつにいりません。迷惑ばっかりかけたのに、靴買って貰うなんて…」
「……」
「それに、ヒールのある靴履かないのは無理です。少しでも背を高く見せたいんです……わたしはせーぜー転けないように頑張りますから…」
くくくと笑った
「気の強い人だな。素直に頷いたらいいんだ。あげると言ってるんだよ。受け取るだけでいい、…俺はおしゃれするなと言ってる訳じゃない。転んでケガでもされて撮影が長引くのが嫌なだけだ」
お茶を飲んでふっと息をつく
変な人
あの日を思い出した
スタジオから逃げ出したあの日
無意識に南座近くにきていた
市村さんが明日南座で
稽古があって来れない…
というのが頭に残ってたからだ

