美帆を軽く小突いて
あたしはスタジオに行った
人はもう居なくなったみたいだ。
「…翔太君。」
「あ、あぁ。やっぱりうまいな、町谷さんの着付け」
「着付けだけ?」
「綺麗だよ。」
「…ふぅん。」
照れもなくあっさり
言うからちょっと照れる
「うん……」
「翔太君?」
「あぁ…、忘れるとこだった、はい台本」
“くじら”とかかれた台本をわたした
「翔太君は…いいの」
「いらないよ。台詞ほとんど覚えたし…みちるさんが好きなとこからよんでよ」
覚えてるんだ、さすが俳優って…
でも好きなとこ…なんて
「…じゃあ舞踏会あたりの、」
「いいよ。どうぞ」
すっと目をつぶってあけた
役に入る合図なのかな。
『…わたしは先生が好きです、』
舞踏会後半、 澄さん 瑠璃子 先生が対峙するシーン
澄さんの台詞も言う
『…久白君。あなたは…もう私を好きじゃないのね』
『……すみません、』
『謝らないで、いいの。私が悪かったの、あなたに甘えてあなたが優しいの見越して利用したんだもの』
なんてつらいシーンなんだろう

