撮影は7時過ぎに終わった
ロケした洋館から
神戸のスタジオに帰ってきて
スタッフ達はぞろぞろと片付けている
結局
お礼は なにも浮かばなかった
「槌谷さん。」
「うー、お礼考えつかなかったごめん。そのぅ…」
あまり人がいないとこに移動して話した
翔太君は
そうだと思ったと笑った
「なら俺が考えたやつでもいい?みちるさん…」
「出来る事にしてね。」
すでに
“お礼”じゃなくなってるし…
でも しないって
言っても聞かないだろうし…
諦めて受け入れよう
「台詞読み付き合ってよ。」
「台詞読み?あたしがぁ」
「うん、衣装はさすがに無理だけど町谷さんが着物は着せてくれるらしいから…」
美帆にまで根回しをしてたのか…
こういう時は用意が
いいと言うかなんというか…
つい はぁとため息が出た
「なに?」
「いや、いいよ…、けどそれならめぐみさんの方がいいんじゃないかって…相手役なんだし、わたし素人だから上手く出来るか…」
翔太君はそんな事かと言った
「いいんだよ、うまいとか下手とか関係なしに…。」

