近くまできたら彼の顔が見えた
目がどこかぼんやり
しているのはお酒の飲み過ぎだ
「…夜の海って怖いな。静かで、ここで死んでも誰にも分からなさそうだ…」
「そうだね。翔太君」
「なに?」
生ぬるい風がふく
どこかだるい気分になる
「結婚焦ってる理由は怜一さんなの?」
「母さんか…、また余計な事を。」
「…怜一さんの事憎んでるのも本当?」
翔太君は はぁあとため息をついた
「……憎いて表現があってるのかわからない。…」
「…うん」
「親父は母さんを置いて死んでった。まだ小さかったから死とかよく分からなかった。…親父の葬式とか終わった後、やっぱり仕事に出なきゃいけなくて、…仕事出て。うるさいマスコミにも笑って……帰ってきたら仏壇の前で泣いてた。」
「……」
翔太君の声はかすれている
「俺達の前でも仕事でも気丈にしててさ、その時テレビで何回も言ってたから覚えてるよ。“さすがあの神田怜一の妻”だって…。神田怜一がいい俳優だったと褒めても、俺は褒められない。母さんはもういない人間の為に笑ってて、でも裏じゃ泣いてる」

