「…つらいならおいで…」
「……」
つらい…?
みんなみんな、
ママもあの人ばっかり…
つらいのは彼女の方だ
一人でスタジオに戻って…
一人で考える…
わたしには彼がいる。
あたしにばっかり
みんながかまう…
それはわからないけど
わたしは簡単にその状況を
手に入れた訳じゃない
苦労して努力して…
やっと手に入れたの…
周りの人…、美帆…
そして翔太君…
ごめんね。一条さん…
「……」
私はきゅっと背中に手を回した
着物はさらさらしている
「ありがと。」
この人は渡したくないの…
一条さんに伝えたい…
けど…
「よしよし。…いい子いい子」
背中をさすりながら
優しい声が耳元で聞こえた
「…ずるい」
「何が…?」
とぼけたように
ふふっと翔太君は笑った

