《姫歌 side》


「姫歌…なんで歌わないわけ?」


私の前には伊月先輩。
しかも少し怒ってます。

まぁ、私がまだ一回も歌わないからなんだけどね。


「…歌いたくないからですかね?」


「やる気あんのか、てめえは」


ひいっ!
怖いんだけど!


そんなこと言われても。歌うのが怖いんだもん。

「あの1年。また伊月君怒らせてる。
てか、歌わないなら辞めればいいのに」


先輩がひそひそ言っているのが聞こえた。


好きで怒らせてるんじゃないもん。


私だって歌いたい。
でも、歌おうとすると怖くなって歌えない。


またあの日みたいなこと言われるんじゃないかって思ってしまう。


歌えないよ……。
やっぱり辞めたほうがいいかな。


歌わないのに合唱部にいても意味ないもんね。


初架には悪いけど辞めようかな。


入ってすぐ辞めるなんて失礼かな?


でも歌えないしな。


「姫歌、聞いてる?」


えっ…?


「すみません!考えごとしてたもんで!」


伊月先輩の話しを聞いていなかった。


最悪だよね。
歌わないし話しも聞かないなんて。


辞めろって言われるかな?


「ソプラノ音ずれてるところあるからなおして」


はい?
私がなおす?