幸子は大阪府堺市に住む看護士見習いで、明るく何事にも積極的な女性だった。

康博は滋賀県大津市郊外に住む独身サラリーマンで、気さくで温厚な男性だった。

二人は住んでいる場所が離れているのと、幸子の仕事が不規則な為に、月に二回程度しか会うことが出来なかった。

最初の出会いから二週間後の雨の日の土曜日、二人は大阪南港にある海遊館でデ−トをすることになった。

康博がバスとJRと地下鉄を乗り継ぎ、難波に着いたのはお昼を少し回っていた。

季節は五月だというのに、冷たい雨がぽつぽつと降り続いていた。

難波駅前のバスタ−ミナルは土曜日だというのに閑散としていてた。

「さっちゃん、こんにちは。この間はありがとう」

「こちらこそ、ありがとう。凄く良かったよ」

幸子は二週間前の夜の事を思い出しながら、少し照れ臭さそうに微笑んだ。