センセイのチカラ―受験生応援小説―





スーっと心に入ってくる。



黒岩に恋をしてるからだけじゃない。


この人の言葉ってあったかい。


一方的に責めたりするんじゃない。




私の気持ちを考えて、話してくれてるのがわかる。




「今日のお前の昼飯は、何や?」



え?


いきなり聞かれて、歯に何か付いてるんかと心配になった。



「ハンバーグ・・・・・・やけど」



「それは、誰が作ったんや?」



「お母さん・・・・・・」



「お前は、お母さんが作った弁当を毎日食べてる。それは、当たり前のことやないねんで。ありがたいことなんやぞ」





そっか。


ケンカしてても、お母さんはお弁当を作ってくれる。




「そんなこと考えたことなかった」


私は、お母さんの優しい笑顔を思い出して、ちょっと泣きそうになった。




「お前の好物やろ?ハンバーグって」



「あ、ほんまや」



「それが母親の愛情なんや。ケンカしてても、お弁当作ってくれる。ケンカしたからこそ、お前の好きなハンバーグを入れてくれたんやと思うで」





お母さん・・・・・・


そう言えば、今日は朝から一回もお母さんの顔まともに見てない。


話もしてない。





「ちゃんとありがとうって言えよ。それと、ごめんなさいも」



黒岩は、ノートで私の頭をポンっと叩いて、優しい笑顔をくれた。



「今から家に帰りたい気分やわ。私、あほやな。お母さんにひどいことしてたんや」



「ちゃんと反省できるお前は、良い子やと思うで。じゃあ、これ明日までの宿題!!」


黒岩は引き出しの中から、プリントを出して私に渡した。



「それと、ちゃんと仲直りすること!!」



「はい!!」



黒岩は、今日の補習はもういいと言った。


今の話が、補習以上の大事な時間やった。



大事なことを教えてくれた。


思い出させてくれた。