その日の帰り道。



校門の脇に海道貴人がいた。



私は自転車を押しながら校門の所まで日南と歩いていた。



海道貴人は1人で立っていて、私達と目が合うとそばに来た。



「竹中、ちょっと渡辺、借りていい?」



と、ひと言言って私の腕をつかむ。



「ちょっとぉ…待って自転車が…」



そんな引っ張ろうとする海道貴人の手に抵抗する私。



日南は状況がよく分からず、不思議そうに何度もまばたきしながら、



「なんなのよ…海道。訳分かんないし~」



と、不機嫌そうに言った。



海道貴人は私の自転車のハンドルを持ち、



「俺が押してく…話がある…からさ…少しでいい、歩こうぜ。ごめんな、竹中!じゃあ、渡辺借りるぞ…」



「はぁ~?まったく、もうーーー」



強引な海道貴人に呆れながら、ため息をつく日南。



「あたしはあんたに用事なんかないんですけど…」



と、私は立ち止まって言った。



すると、海道貴人は



「俺は用事があるの。いいから少し時間ちょうだい」



と、少し早口で言った。