院内をゆっくりゆっくり進んで、

庭に出た僕らは、

建物のせいであまり目立たない場所にある

池の前に来ていた。

「着いた!」

梨央菜は子供のようにそうはしゃぐと、

何が何だか分からない、

という顔をしている僕の手を引いて

池の向こう側まで歩いた。

「痛てて...」

ゆっくり歩いてもやっぱり痛い。

「ごめん、早すぎた!?大丈夫??」

心配そうな顔をする梨央菜に

大丈夫、と手で合図して

ゆっくりと腰を下ろした。












そこに広がっていたのは......












「四葉の...クローバー??」







四葉のクローバーだらけの景色。








「へへ。驚いた??」





嬉しそうな顔をする梨央菜。





「えっ!?すごい...何で??」



身体の痛みも忘れて興奮する僕に、

梨央菜は得意げに話してくれた。




「クローバーって、少し傷を付けると、
 葉が増えて、四葉や五葉になるらしいの。
 それを聞いた院長先生が、
 3年前からこうして四葉になるように
 頑張ってるんだって。」

「そうなんだ...」

「だから、みんなこの病院で苦しんでるけど、
 傷ついた分だけ、絶対幸せになれるんだよ!
 だから諦めないで、明るく生きようっていう
 願いを込めて...毎年やってるんだって」

看護士が決まって言う、

『仲間』

の意味が、少しだけ分かった気がした。

病状が軽かろうが重かろうが、

苦しくて、元気になりたいって思ってるのは

みんな同じこと。

病状の軽い人が重い人を助けたり、

お互いが励ましあったりすることで、

きっと心が元気になるんだ。