「晴!庭を散歩しに行かない?」
しばらくして退院した梨央菜は、
毎日のように僕に会いに来てくれた。
梨央菜には、僕の病状や、
治らないかもしれないということを全て話してある。
それを全部包み込んで、
彼女は僕を愛してくれた。
僕も、梨央菜を愛していた。
「散歩?いきなりどうしたの?」
僕が首をかしげると、
梨央菜は何故か嬉しそうな顔をした。
「見せたいものがあるの!
ほら、早く行こう」
彼女はそう言って僕を急かす。
でも...
新しく飲み始めたきつい薬の副作用で、
身体の関節が痛くて
とても散歩なんてできる状態じゃなかった。
「ほら...昨日言っただろ?
薬の副作用で...」
「そう言うと思って、持ってきました!
じゃじゃーん!」
今日はやけにテンションが高いな。
そう思いながら梨央菜の様子を眺めていると、
彼女は廊下から車いすを持ってきた。
「私が押すから、晴乗って」
ニコニコしながら僕を待つ梨央菜。
「いやいや...梨央菜に押すのは
無理じゃないかな。僕、重いし」
僕は身長が180cmある。
155cmと小柄な梨央菜が押そうものなら、
骨が折れてしまいそうだ。
「いいから乗って!」
軽く怒られて僕は渋々乗る。
「よし!では出発進行~」
嬉しそうに車いすをゆっくり押す梨央菜。

