美和の言葉が頭の中を駆け巡る。
千夏と遥は兄妹ではない。
美和は確かにそう言った。

「黙っていてごめんなさい。あなたは4歳の時に、本当のご両親を事故で亡くした。施設に預けられそうになったところを、私達が引き取ったの。そのあとに、光が産まれた」
「俺だけ…誰とも血のつながりがない…?」
「どうしても言えなかった。ごめんなさい…」

素直に頭を下げたあと、美和は続きをゆっくりと語りはじめる。
「そのあと私は恵介を愛してしまった。女手ひとつで遥と光を育てる事に疲れてしまった私は、あろうことか、家庭を捨て恵介との楽な生活を選んでしまった…。そこは否定しないわ。でも、あなた達を忘れた事なんて一度もない!」
美和は遥の肩を掴んで、必死に訴えた。
「私を一生恨んでもいい、だけどこれだけは信じて、遥!!
あなたは確かに血の繋がりはなかった。けど、父さんも光も私もあなたを愛してた!父さんが体を張ってあなたを助けた事が、その証拠!」
「言っただろ、俺はもう千夏しか信じない。今更あんたの事なんか信じようとも思わない。何が証拠だ。俺のせいで父さんが死んだ、そうやって一番俺を恨んでたのはあんただろ!」

──“あんたのせいで父さんは死んだのよ!!”