鬼下刑事の車の中━━━
外はすっかり暗くなっていて…
ビルの明かり、街灯が桜を少しだけ照らしていた━━━
車は、転落事故現場へと向かう。
無言の車内。
話を切り出したのは鬼下刑事だった。
「何か、分かった事あるのか?」
「はぃ。少しだけ。」
「何が分かったんだ?」
鬼下刑事が、後部座席に座っている私を…ルームミラー越しに見た。
「あ…事件発生した時間なんですけど、男の人同士が言い争う声を聞いたと…大倉さんと塚原さんが言ってました。」
「言い争いか…」
「その言い争いを止めたのが奈央子さんみたいなんです。」
車はスピードを落とす。
どうやら目的地に着いたようだ。
「これは、また、厄介な事に…ヨイショと…」
そして、車は止まり…
鬼下刑事はサイドブレーキを思いっきり引いた。
「着いたぞ。」


