「あ…」
私は思わず声を出してしまう。
敬太は一瞬、私の方を見る。その姿に目を奪われた。
初めてみた敬太の顔。
当時は黒髪の清潔感のある短髪で。シンプルなシルバーの縁の眼鏡をかけていた。寝ていないみたいな、腫れぼったい目。唇を噛み締めている姿は…
何かに苦しんでいるようだった━━━
敬太の視線はすぐに窓の外に戻る。
「窓の外には…何が見えるの?」
私は敬太に訊ねた。
敬太は何も答えず、逆に私に質問をした。
「大河原先生?どうして…生きなきゃダメなんですか?…家族って何?」
私はそっと窓からの景色を見た━━━
ピンク色の景色。
それと…
何も変わりのない普通の街並みが映っていた━━━


