そうあれは良く晴れた日のこと。

 なんていう出来の悪い三文小説の始まりとは程遠い、北風が襟首を“ひっつかんで”アスファルトに身体を引き倒すくらい強く吹いた日のこと。

『こい、今すぐ』

 という傍若無人極まりないメールで俺は呼び出されたんだ。

 アイツに。

 異性の幼なじみと聞くと、それだけで何やらトキメキラブちっくな香りが漂ったりする。

 だがしかし、アイツとの関係はそんなものとはおよそ無縁だ。

 腐れ縁という表現すら生やさしい。

 つまりは、恥を忍んでいうならば――奴隷とご主人様。

 いうまでもなく、奴隷は俺の方。

 どうしてそうなったのかと問われると答えに窮する。

 なぜなら物心ついたときにはすでにそういう力関係だったからだ。

 これを不幸といわずして何といおう。

 挙げ句、だ。

 たちが悪いことにコイツは俺以外のやつにはこの“ご主人様気質”を微塵も出さない。

 だからはた目には『仲睦まじい幼なじみカップル』にみえてしまうらしい。

 そりゃあ俺だって抵抗はしたさ。

 コンニャロウがどれだけ暴君で、自己中で、気遣いを欠片も持ち合わせてないかを切々と周りに訴えかけた。

 その度に、