そう淡々と彼女は言う。

…しかしそれは、姉と二人で決めた事だった。
勿論俺はそれに反対したが…姉は聞かなくて。


「こうするしか、手は無い」


と最終的に結論を出した。


「…ハインツの代わりに、お前が?ハッ、面白い。…期限までに帰って来なければ愛しい姉が死ぬ、か。まるで物語のようじゃないか。」


その提案に父は満足げで。

…そんな父の表情を壊したくて壊したくて仕方が無かった。


「ですが、一つだけ条件があります。」


そして俺は突きつける。


「もし俺が母、もしくは母に関する証拠を持ってきた場合…勿論姉は解放して頂きます。そして…」


ギリッと歯を食いしばり、告げた事。


「母さんを私情の為に国外追放した罪として、今度はアンタを国外追放してやる…!」


其れは憎しみの塊。
憎悪の結晶。


母の笑顔を奪った悪魔への制裁。



「―…いいだろう。」




そして世界は歪む。




歪んで歪んで、真っ逆さまに堕ちて行く。

海の見える町…盗賊団ヴァルドヴァレスのアジトにて。


「オズヴァルド・ヴァン・ウォーロックに渡して欲しい。」


「ああ、分かったよ。あんた、オズの友達かい?」


「…まあ。」


「アイツ、腕がいいから…すぐに賊頭にでもなりそうだよ。」


「…そうか。元気でと伝えておいて。」