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「あきらくんっ!」


パタパタという音が似合いそうな感じで、一生懸命走って来る小さな女の子。

ふわふわとした栗色の髪が風になびいて、その柔らかさを強調させる。

そして色白な肌に、長いまつ毛がびっしりと生えている大きな瞳。

頬はピンク色に染まり、唇も自然と色づく。

誰が見ても「お人形さんみたいね」と言う、とても可愛い女の子。

その子が…


「早和ちゃんっ」


名前を呼ぶと同時に、自分の腕の中に飛び込んでくる小さな体。

それを後ろに転びながら受け止めた。


「ひゃぁっ!あきらくん、ごめんね!!だいじょうぶ!?」

「大丈夫だよ。それよりどうしたの?そんなに急いで」


俺の手を「よいしょ」と引っ張って起き上らせた早和は、ハッと思いだしたように俺の手をまた握った。


「あのねあのね!あきらくん、さわといっしょにきて!!」

「う…?うん」


目的もなにも知らされずに呼ばれた事は少し不思議だったけど、他でもない早和のお願いなら行かない理由なんてなかった。

ちなみに、その時俺がいたのは近所の公園。

友達と遊んでいたのだが、その友達もあらかた帰ってしまい、そろそろ家に帰ろうと思っていたときだった。

早和と出会ってから、約1年が過ぎた頃。

まだ小さかった俺だけど…この頃から、早和の事は何にも代えがたい大切な存在となっていた。


「早和ちゃん…?どこいくの?」

「あきらくんのおうちだよ?」

「へ?」


早和の家じゃないんだ?

そう、不思議に思ったのを覚えている。

夕方の道を、早和は楽しそうにニコニコしながら俺の手を引いて行く。

それを見ていて、俺も楽しくなった。

なにより、早和が笑っていてくれることが嬉しくて―――………。