「Trick or Treat!!」


そこら中がはちみつ色に染められる、夕方の頃。

差し出された手をジッと見つめ、それからその手の持ち主の顔を見た。

ニコニコと嬉しそうな顔。

たぶん、俺がお菓子を持っていないと思っているんだろう。

…だけど、早和。

残念だったな。


「はい」

「あ…。飴だ…」


差し出した手の平の上に落とした、ピンク色をした透明の飴。

その飴を、早和は嬉しいような、悔しいような複雑な顔で眺めている。


「残念でした。今日はHalloweenだからな」

「むぅ~…なんで持ってるのよ」


ちょっと悔しそうに膨れるその姿も可愛い。

小さい頃から見慣れている、早和のそういったちょっとしたしぐさが実は結構好きだったりする。

…そう、思っていることは内緒だけれど。


「持ってないと、渉にイタズラされるから。…それに、誰かさんも何か企んでたようだし?」

「…な、なんのことかなっ?」


…わかりやすいやつ。

ついついクスッと笑ってしまうと、案の定、早和は怒りだした。

それをなだめていると、最終的には拗ねてしまう。

昔から、行動パターンが全く変わっていない。


「ほら。帰るぞ」

「うぅ~…」


不満そうな早和の手を引っ張って歩き出す。

家までの道のりを一緒に歩きながら、小さいころの事を思い出した。