―――明side


「しつれいしまーす…。…って、誰もいねーじゃん」


医務室のドアを開けて言う。

…どっか行ってんのか?

でもまあ、それは好都合。

俺は医務室のドアを閉めると、小さく呟いた。


「…我に従いし風の聖霊よ、その力を持ってこの水を霧散させよ。急急如律令」


ふっと俺等の間を風が通り抜ける。

次の瞬間には、俺と早和の服は乾いていた。


「…ケガの手当てするか」


俺は早和をベッドに寝かせて切られた左足を見る。

さっきの術で流れていた血も霧散させてくれたらしいが、かなり大きな傷口からはまた真っ赤な血が流れだそうとしていた。

とりあえずその血を拭き取ってテキパキと手当てをする。

俺も一通りの事は出来るが早和はもっとすごい。

昔からケガする事が多かった俺をずっと手当てしてくれていたからだ。

昔は今より泣き虫だった早和が目に涙をいっぱい溜めながらいつも俺を手当てしてくれた。


「明のケガが早く治りますように」


そう、言いながら。