俺が逃がす訳ねぇだろ?
それも、早和を傷つけた奴を。
「縛」
静かに小さく呟く。
『なっ!?か、体が動かない!』
その場でピタリと動かなくなる妖。
それを見て、口だけで笑う。
「そりゃあ、縛魔術だからなあ。動かなくて当然だ」
『ひ、ひい!頼む!見逃してくれぇ!』
…そんな事、出来る訳ないだろ。
「…無理だな。お前さぁ、もうちょっと獲物を選べよ。…早和に手を出して、無事でいられるとは思うなよ」
俺の声が低くなる。
『も、もうしないから…!勘弁してくれよ!』
「……問答無用」
俺は小さく吐き捨ててから印を結んだ。
「オンアビラウンキャンシャラクタン!」
『やっ、止めてくれ!』
「ナウマクサンマンダバザラダン、センダマカロシャダソワタヤウン、タラタカンマン!」
妖怪が叫んでいる。
俺はそれを一切無視してそのまま続けた。

